つばめと少女

Swallow and Girl

『つばめと少女』というタイトルで一曲作ることは、ずいぶん前に決めていました。少女はぼくの妻、つばめは去年他界した妻の叔母のことを指しています。この曲は、天国の叔母に捧げるレクイエムです。

叔母は妻にとって二人目の母親のような存在でした。生前はぼくにもとても良くしてくれました。今思えば、腎臓を患ってから歩けなくなり、そのまま亡くなってしまうまでがあまりにも早かった。寝たきりになった後も、病気が良くなったらぼくたちの娘を連れて公園に行くんだと話していました。残念ながら、その夢は叶うことはありませんでした。

叔母が亡くなる前の深夜、不意にインターフォンが鳴りました。こんな時間に誰だろう、と出てみても、そこには誰もいませんでした。誤動作かなと思ったのですが、今となっては、あれは叔母が最後に妻に会いに来たのだと思っています。

叔母はインターフォンを鳴らしたあと、どこへ向かったのでしょう。ぼくはなんとなく、「燕」という名の通り、今でも翼を広げて、大空を飛び回っているような気がしています。歩けないどころか、飛べるようにすらなった身体のあまりの身軽さに、もしかすると成層圏にまで達しているかもしれない。妻も、ぼくも、いずれそこに行く日が来るでしょう。空の青さが終わるところで、風になった叔母はどんな顔をして迎えてくれるのでしょうか。